35階から落ちてきた恋
グラスを持ち上げて喜ぶ私を見て頬杖をついた進藤さんはくすっと笑っている。
「果菜は単純でいいな」

「何ですか、その言い方は。またどうせ子どもだとか思ってるんでしょ」

「そんなことないさ。果菜は素直でいいんだ」

「またそんなこと言って。どうせお寿司屋さんでのこととか水族館のこととか思い出して言ってるんでしょう」
フンっと顎を持ち上げて笑っている進藤さんから顔をそむけるとニヤニヤと笑っているアツシさんと目が合ってしまった。

ハッとして顔が熱くなる。
つ、ついこんな大人のBARで本性を・・・。
それと言うのも進藤さんのせいだ。隣り合って座っている進藤さんに背中を向けて黙ってグラスを口に運んだ。


「すっかり進藤と親しくなったんだね。寿司屋とか水族館とかいろいろとデートもしてるんだ」
アツシさんが私に優しく微笑む。

親しく?
どう返事をしていいのかと進藤さんの顔を見る。

私を見る進藤さんの目はかなり優しくて。
私も「そうですね」とアツシさんに微笑み返した。


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