社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
その言葉の意味する事柄が後々分かる事になるが、まだ先の話───……


気付けば、時計は午前2時を過ぎていた。


カクテルも一杯しか飲んでないし、酔ってもいないから記憶が飛ぶ事もない。


東京の街は午前2時でも輝いていて、車の通りも絶えない。


"遅くなる"と言った理由はピアノを弾く為で、私の為に耳コピして披露してくれた事がとても嬉しかった。


キスした後は何にも話さず、ただ助手席に乗って、外の景色を見ながら相良さんのピアノを弾く姿を思い出していた。


仕事している時の相良さんよりも、好き。


ピアノを弾いている時、横顔がとても綺麗で男の人の色気を初めて感じた。


「はい、着きました」


「…もう遅いし、仮眠しますか?」


話さないままに自宅アパートまで到着し、私は名残り惜しくて相良さんを誘導する。


「女性が易々と誘うもんじゃない」


そう言いながら鼻を摘まれ「ぷぎゃっ」と言う変な声を出してしまうと相良さんは苦笑いし、触れるだけのキスを落として「おやすみなさい」と返した。


「おやすみなさい…」と私も返したけれど、やっぱり名残り惜しくて降りられずにいた。


「降りないの?」


「降りたくありません。降りたら、またしばらく会えないんでしょ?」


「…全く、しょうがない人だ。今週の土日は忙しいので次の土日に会いましょう。プールも行くし…。それまで、また我慢していて下さい」


我儘を言って誘導したが明日明後日の土日は忙しいとお断りされた。


まぁ、来週の約束をしたので良しとするか!


「分かりました、じゃあ、おやすみなさい」


カチンとシートベルトを外して降りようとした時にギュッと抱きしめられた。


再度、「おやすみなさい」と言われて唇を塞がれ、息も絶え絶えしく舌を絡ませる。


車のハザード音が響き、光がカチカチと薄暗い通り道を照らす。


私が降りた後、部屋に入ったのを確認してから相良さんの車は走り出した───……
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