社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
更なる追い打ちをかける様な不意打ちのキスに驚きを隠せずに騒いでしまうと、相良さんまでもが頬を赤くした。


歩道には行き交う人達、反対側の車線の信号待ちの車…誰も見ていないかもしれないけれど、周囲の事を考えたら恥ずかしさが増した。


「とにかく余計な心配したくないんだったら、あの人が訪ねてきても通さない事。もう来ないとは思うけど…」


「はい、分かりました」


まだ頬の赤いままの相良さんだったが、信号が青になると直ぐに車を走らせた。


「まだ早いけど、こないだの続き…」


「こないだの続き…?い、今ので、よ、欲情したんです、か?」


こないだの続き…真っ先に思い出してしまったのは押し倒されて、ビンタをしてしまった事。


モジモジしながら言葉に出してしまったが、相良さんは大笑いしている。


「…っぷ!…っはは、和奏からそんな言葉を聞くとは思わなかった!ドラマの続きって言いたかったんだけど…!和奏がそっちの続きをしたいなら、そうしよっか?」


「…か、勘違いっ、でし…た」


「和奏にビンタされるから、無理にはしないけど…そのうち欲情したら…ね?」


「も、もう言わないでっ!相良さんのバカッ」


からかうようにずっと笑っている相良さん。


勘違いして口走ってしまって私は恥ずかしく思いつつも反省している最中だが、こんなに笑っている姿を見るのは初めてで嬉しい。


「そうだ!和奏はメール気付かないから、メッセージアプリを設定しといて」


「うわっ、は、はい!」


助手席側にスマホをポイッと投げられて、膝の上に乗ったので滑り落ちない様に慌てて掴む。


「チャットみたいで面倒だったからアプリ入れなかったけど、和奏がメールよりやり取りが楽なら入れといて。それから、気になるならチェックしてもいいよ?履歴とか…」


「チェックしませんっ!」


「ついでに、坂上 麗紗も消しといて。必要ないから…」


「嫌です、自分で消して下さい!」


わだかまりが溶けたかの様に穏やかな雰囲気だけれども、私にはあの人の事が解決されていないままだが、相良さんが関係を絶とうとしているのは確かな事。


言いたくなさそうなところを見ると、やっぱり元彼女なんだろうな…。


私とは似ても似つかない、正反対の様な彼女。


相良さんが、ますます理解出来ない。
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