Lingerie~after story~






ああ、今日も……

「お前らの色彩感覚どうなってるんだ?どの生地も平凡レースも安っぽい。当たり前の概念捨てて新しいもの探してこいっつっただろ?そんなに難しい事か?全部使い物になれねぇよ。今すぐ探し直してこい」

お厳しい九条様健在の様ですね。

アシスタントの女性が数人、それに対峙するのは今程声を荒げていた九条くんだ。

相も変わらず優しさなんて皆無。

無能だと言い張るような口調や言葉で彼女たちの仕事に叱責してたらしい場面。

それにしてもあそこまで態度悪く対応しなくても、と思うのは私だけではないらしく、叱責された面々は勿論周囲でこの状況を捕らえていた女性陣はみんな彼に遺憾の眼差しを向けている。

そんな視線などどうやら彼はお構いなしらしく、用件が終わってしまえばさらりと自分の仕事に意識を戻しぼそぼそと不満をぼやく彼女らなど蚊帳の外。

今日も長い前髪に魅力は隠し、ひたむきに自分の世界に没頭しているようだ。

いつも…通り…か、

「あら、ミモリ来てたの」

不意に横から響いた馴染みある声音に振り返れば、今日も愛想と艶やかさを纏ったイズミが手を振りながらにこやかに近づいて来る。

「どうしたの?今特にこっちに出向く様な仕事請け負ってなかったんじゃない?」

「うん、だから中には入ってないでしょ」

「んふっ、つまりは珍し~く仕事絡みじゃなく旦那さまのお顔拝見目的にここまで足を運んだってわけね」

クスクスっと含みたっぷりに笑って言葉を落とすイズミは意地悪だ。

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