愛人契約
その日は会社は休日で、泰介のところへ来ていた。

「洗濯物は、ここね。」

「あいよ、姉ちゃん。」

こうして見ると、泰介は病人には見えないけれど、いつ命を奪うかもしれない爆弾を、脳に抱えているのだ。

そんな時泰介が、俯きながら言った。

「姉ちゃん。俺、このまま死んでもいいよ。」

「なに言ってんの。人生、これからじゃない!」

「うん。でも、姉ちゃんの重荷には、なりたくないんだ。」

「泰介……」


病院の帰り道、電信柱の影に、闇金の広告が載っていた。

「もう、お金を借りるしかないか。」

私はその闇金の電話番号を控えて、電話をした。

もうその日は夜になり、猶予期間も過ぎていた。

それでいい。

本田さんとは、あの日だけの縁だったのだ。
< 35 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop