血まみれ椿姫
一瞬、なにが起こったのか理解できなかった。


風花にキスされ、抱き着かれているのだと気が付くまで少し時間がかかった。


「風花……?」


「違うの……ごめんなさい……あたし……」


俺に抱き着いたままの風花が混乱したように言葉を紡ぐ。


「え? なに? 風花の好きな相手って城じゃないのかよ」


俺も混乱してそう聞く。


すると風花は顔を上げた。


その目には涙が浮かんでいて、俺はまた言葉を失った。


どうすればいいかわからなくて、頭の中が真っ白になっている。


好きな子の涙がこれほど威力的だと初めて知った。


「あたし怖くて……」


「え、怖い?」


俺は風花に聞き返す。


今までの話の流れとは少し違うようだ。
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