血まみれ椿姫
俺がそう声をかけると、風花が驚いたように振り向いた。


「良真、随分とトイレが長いんだね」


そう言われ、俺は肩をすくめた。


「あぁ、まぁな。風花もトイレか?」


「うん……城と会話が続かなくて」


そう言い、苦笑いを浮かべる風花。


やっぱりそうか。


意識しすぎていつもの調子になれない城を見かねて、風花は逃げて来たんだ。


「なぁ、1つ聞いていいか?」


「なに?」


「風花は城の事が好きなんだろ?」


俺の質問に風花は一瞬にして顔を赤らめた。


それはもうイエスと言っているのにふさわしい態度だ。


「城もきっと風花の事が……」


『好きなんじゃないかな?』


そう言いたかったのに、言えなかった。


ふわりとした柔らかな感触が唇にあたり、同時に風花の華奢な両腕が俺の腰に回されていた。
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