血まみれ椿姫
☆☆☆

家の近くからタクシーに乗るとさっきのメモを確認しながら運転手に行先を伝えた。


タクシーのラジオからは軽快な音楽が流れてくる。


それと同時に俺はこれと同じ音楽を最近聞いた事を、不意に思い出した。


あれは風花と綾菜ちゃんが殺された数時間後のことだった。


俺は警察署の中にいて、事情聴取を受けていたんだ。


その時、警察署内の誰かの携帯電話が鳴り、この音楽が聞こえて来たんだ。


俺は真っ白になっていた記憶が徐々に蘇るのを感じていた。


風花と綾菜ちゃんが目の前で殺され、茫然としている中なかなか家に戻ってこない2人を心配して、風花の両親が玄関から出て来たんだ。


その時の悲鳴がリアルに頭の中で響き渡り、俺は自分の耳を塞いだ。


娘2人が首を切られて死んでいる場面を見て、両親はどう感じたのだろう。


悲鳴が聞こえて来た後、すぐに救急車とパトカーが来たのを思い出した。


近くにいた俺と城は血まみれの状態で、当然犯人だと疑われていた。


ただ、城の方はその場で倒れて気絶していたので、もっぱら俺が犯人扱いを受けていた。


しかし、俺には姉妹を殺す動機がなかった。


首を切断するような道具も持っていないし、抱きしめた綾菜ちゃんの服にしか俺の指紋はついていなかった。


明らかな証拠不十分。

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