血まみれ椿姫
「あぁ、来たよ」


俺はそう返事をする。


目の前にいるおばあちゃんは施設に入る前と同じで、しっかりしているように見えた。


「いつもいつもすまないねぇ」


「いや、いいんだよ」


俺はおばあちゃんの態度に戸惑いながらも、隣の椅子に座った。


「おばあちゃん、椿森の事を教えてよ」


俺がそう言うと、おばあちゃんは驚いたように目を丸くして俺を見た。


「良真は椿森を知っているのかい? あの森はお前が生まれるずっと前に伐採されたんだよ」


そう言いながら立ちあがり、ベッドの横にあるキャビネットから一枚の写真を取り出した。


「ほら、ご覧。これが当時の写真だよ」


おばあちゃんから受け取った写真はカラーだったが、かなり劣化していて変色している。


でも、その中に若い頃のおばあちゃんを見つける事ができた。


「これっておばあちゃん?」


赤いワンピースを来て、男性たちと混ざって写真に写っている女性を指差して聞くと、おばあちゃんは頬を赤らめて「そうだよ」と、頷いた。


「私の隣に映っているのが、当時付き合っていた人なんだ」


そう言われ、俺はマジマジと写真を見た。
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