血まみれ椿姫
ジリジリと近づいてくる足音。


「あ……あ……」


古家先輩が後ずさりしていくのが見えた。


女の子のターゲットは完全に古家先輩へ向いている。


「やめろよ……」


俺は震える声でそう言っていた。


女の子がこちらを向く。


その顔は城の血で真っ赤に染まっていた。


それでも女の子はニタリニタリと笑う。


まるで血を浴びる事で快楽を得ているかのように。


「祠は無事だった……なのに……なんで……」


俺はゆっくりと立ち上がる。


悲しみと混乱と恐怖とで、頭の中はメチャクチャだ。


不意に、女の子が笑い始めた。


声を上げて楽しそうに飛び跳ねながら。


俺は古家先輩へと手を伸ばし、その手を握りしめた。
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