血まみれ椿姫
「呪いは今もまだ封印されていた。なのに、どうして!?」


「椿は死んだ。でも我はまだ生きている」


女の子の声が、まるでトンネルの中にいるように響き渡った。


風がやみ今まで聞こえてきていた鳥の鳴き声もピタリと止まる。


俺は先輩の出を強く握り直し、自分の後ろへと移動させた。


「椿は美しい娘だった。我はずっと恋をしていた。この、森に咲き誇る一番の娘に、毎日のように会いに行った」


女の子がジリジリと距離を詰めてきて、俺と先輩は後ずさりをした。


「それが、人間の手によって娘の首は掻っ切られたんだ!!」


頭の中に響くような声に、俺と先輩は同時にその場にうずくまっていた。


チェンソーが振り回され、草木がバラバラと落ちていく。


「くっそ……」


俺は先輩の体に抱き着くようにしてその身を守った。


下手に動くと危険だ。


どうすればいい?


「並んでいた椿の頭をこのチェンソーでな!!!」


女の子がチェンソーを振り上げる。


その目は血走り、先輩の事しか見えていない。


「その娘が死ねば我の気持ちは救われる!」


女の子はそう叫び、チェンソーをふりあげたのだった……。
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