【短】泣き虫先生とわたしの卒業

 やっとわかったのか、今度はぼそぼそと何か喋っては口ごもってしまう。



「なに?」

「だって」

「だって?」

「渚、卒業していなくなっちゃうからさ」



 少し照れているゆうちゃんは可愛らしい。それを隠すようにそっぽを向く仕草も。


 横顔は大人の男性で、黙っていれば恰好いい。わたしから見れば、大人の魅力に惹かれてしまう。
 それなのに仕草は少し子供っぽくて可愛い。それも魅力の一つなのかもしれない。



「確かに卒業するけど、泣くことないじゃない」

「相談する相手がいなくなる」

「自分で何とかしなよ」



 突き放すように言うと、みるみる目に涙が溜まり始める。そういうところ、やっぱり変わらない。


< 26 / 41 >

この作品をシェア

pagetop