蜜月同棲~24時間独占されています~
びくっ!
と固まった私を置いて、克己くんはさっさと皿をふたつテーブルに運んでしまう。


「……すぐ、からかう」


もう、とキスされた側の耳を片手で抑えた。


平静を装ってはいる。
けれど、どきどきしないわけじゃない。


気になる人がいるって言ってたくせに、こんなことばっかりするなんて、克己くんは意地悪だ。
彼が私をからかう度に、近頃ずっと頭にちらつくのはそのことばかりだった。


とても曖昧な言い方だと思った。
好き、というわけではないのだろうか。


それとも、好きだけど叶う恋じゃないから、ということだろうか。
考えれば考えるほどに、何やら切ない妄想が出来上がる。


克己くんほど、傍目に見ても出来過ぎなほどに格好良くて、社会的地位もあって能力もある。
そんな人でも、叶わない恋なんて……もしかして、既婚者、とか?


きゅうん、と胸の奥がせつなく苦しくなって、小さく頭を振った。


「柚香? パン焼けた?」


テーブルの方から克己くんの声に呼ばれ、慌てて返事をする。


「焼けた! すぐ持ってくー」


焼けたロールパンをお皿に乗せ深呼吸すると、バターと一緒にテーブルへと運んだ。

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