蜜月同棲~24時間独占されています~
からかってばっかりだ、と私はまた背中を向けた。
目を閉じようとしたけれど、克己くんの言葉が続く。


「子供の頃の柚香って結構泣いてたイメージだなと思って」

「それはお姉ちゃんと克己くんがずっと一緒に遊んでて、私を置いてきぼりにするからでしょ!」


男勝りな姉は男の子との遊びの方が楽しいらしく、ふたりは年も近いこともあって本当に同性の友達のように仲良しだった。
私はその遊びについていけず、よくほったらかしにされて寂しくて泣いていた……のだったと思う。


さすがに小学生低学年の頃の記憶は曖昧だ。


「そうだっけ?」

「そうだよ」


というか、私の克己くんとの思い出で浮かぶのは、そんな小さな頃ではなくて。
克己くんに恋心を抱き始めた中学生くらいからの方が鮮明だ。


……そうだよね。あの頃克己くんは彼女とかいたし。


想い出は共有しているはずなのに、思い浮かべる時代が違う。
そのことに少し寂しさを感じながら、私は目を閉じた。


うつらうつら、やがて意識は暗闇に沈む。
その直前、とてもあたたかな体温を背中に感じた、そんな気がしたけれど。


もしかしたら、夢だったのかもしれない。





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