白衣の聖人による愛深き教示
 自分の名前を聞かれた覚えはある。
 それにきちんと答えられたのか定かではないけれど、彼の名前はその瞬間から私の頭に焼き付いて離れなかった。
 そんな眉目秀麗な彼に、胸をときめかせるのは当然私だけではない。
〝医務室の先生、超イケメンーっ!〟
〝やっばーい、マジで惚れたかもぉ!〟
 同期の女の子たちがこぞって盛り上がる黄色い声が、感じた運命に水を差した気がした。

 しかし、あれから三年が経った今。
 まさか電話越しに身近に彼を感じられる日が来るなんて、あのときは思いもしなかった。

『明日は、こちらの勤務になっていないので残念です』

 すぐ耳元で彼の穏やかな声が、私にだけ向けられている。
 ここの会社に来られなくて淋しいと、そう聞こえた。
 もしかしたら、私と会えないことを残念に思ってくれているのか。
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