薔薇姫《短編》

黒い病

人間の血を吸った株は、次第に鮮やかな緑色だった茨が黒ずみ、ますます棘はいきりたち鋭さを増しました。

そして、美しく咲き誇っていた花も、ひとつ、またひとつと花弁を落とし、蕾が枯れ落ちていきました。

城を取り巻き、庭や壁に這っていた茨たちから、順に姫への愛を忘れ、近寄るものならなんでも襲うだけの、凶暴な茨と化してしまいました。
そして血を吸っていない薔薇にも、少しづつ病のように伝染していくのです。

凶暴になった黒い茨は迎え撃つ敵もいないのに城の中をうごめいていました。
壁を傷つけ、石にされた王や家臣達が気まぐれに打ち壊されていきます。

そんな理性を失った自分達の片割れを嘆き悲しみむ暇もなく、城の薔薇達の一番中心にいる姫の部屋を守る薔薇達は力の限りを尽くして美しい花を咲かせ、毎日姫の美しく可憐な唇に薔薇露を落とし続けました。

ですが、いくら魔術により永遠の生命力を得たとはいえ、
病にかかれば姫への愛は失われてしまいます。

花をつけることの出来なくなった薔薇にはもう未来はありません。


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