薔薇姫《短編》
ただ安らかな顔で眠る姫の頬はほのかに赤らみ、時折赤い唇からせつなげな吐息が洩れます。

寂しくもありましたが、姫をいつまでもじっと見つめているだけでもとても幸せなことです。

その後、城の中の人や生き物は魔術師が石にしてしまい、ライバルの騎士や王子達と薔薇達は茨を巧みに操って果敢に戦い、勝利をおさめました。
魔術師も北の森に戻ってしまい、この城の中には薔薇と姫の中を邪魔する者はいません。
時折、姫を助けようと男達が城にやってきますが、そのことごとくが茨に阻まれました。

ですが、魔術師の姫を想う者が倒れたら身体の一部にするという新たな呪いで、薔薇の中である変化が起きました。
人間達の欲望が、姫を想う純粋な薔薇の心をゆがめてしまったのです。

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