薔薇姫《短編》
薔薇達には、このまま目の前で姫が朽ち果てる姿を見るのは耐えられなかったのです。

そしてもう一度、姫のあの輝く瞳で愛でて欲しい、

鈴の転がるような声で語りかけて欲しい、

絹のような美しい白い手で触れて欲しい、


それは姫が眠りについてから、薔薇達がずっと心の底で願っていたことで、最後の願いでもありました。


ですが、薔薇達には、姫を目覚めさせる力はありません。


そして、姫を助けに来る者達は凶暴な黒い茨に倒され、いつ姫のもとへ辿り付くのかわかりません。
待っている間にも、刻々と姫の眠りの終わりが来てしまいます。
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