黙ってギュッと抱きしめて
君と描く未来の話
結婚ってどんなものなのだろう。
周りがどんどん結婚していく中で、なんとなくそんなことを考えてみる。ちらりと見つめた先には機嫌のいい男がバターの香りがするフライパンを動かしながら何やら美味しそうなものを作ってくれている。
「…なに?」
「え?」
「さっきから視線を感じてんだけど。言いたいことあるなら言って。」
「言いたいこと…ないけど。」
「…ったく、俺に嘘つけないってそろそろ学んだら?」
あさりとほうれん草のバター醤油パスタが出てきた。翼が好きな組み合わせだ。バターの香りの原因はこれだったのか。湯気の立つ皿をテーブルに置くと、遥は翼の隣に座った。
「どうしたの?」
まじまじと目を見つめられれば自分に逃げ場などないことも知っているし、そもそも遥から逃れられないことも知っている。しかし、この二人きりの空間で自分の方から結婚の話題を出すなんて無理にもほどがある。
「…い、言えない。」
「なんで?」
「さすがに気まずくなりたくないから。」
「何言われたって気まずくならないから。」
ポンと頭の上に乗った手が、髪を軽く撫でる。
「なに。ほんと、どうした?」
この優しい声に何度懐柔されたことか。悔しいけれど、この声とこの目とこの手に勝てると思えたことがない。そして今日も今日とて、負けてしまう。
「…け、結婚。」
「結婚?」
翼は頷いた。
「…結婚のこと、考えてたの。」
言ってしまって、かあっと顔に血が集まってくるのを感じた。恥ずかしすぎる。まるで結婚したいって思っているみたいだ。
「うん。それ、そんな恥ずかしがること?」
「え?」
顔が熱いままだとわかっていたけれど、顔を上げた。
「俺もよく考えるよ。口に出さないだけで。」
意外すぎる返しに、余計に顔が熱くなる。そんな翼を見て遥は、口元を小さく緩めた。
「一緒に住んだらどんな感じかとか、結婚したらどんな風になるかとか、まぁ色々考える。結婚するとしたら翼とだし。」
「そ、そうなの?」
「浮気してんのかよ。」
「してないに決まってるでしょ!」
「じゃあさっきの返しおかしくね?そうなのじゃなくて、そうだよね、だろ。」
…確かに。遥が正しい。
周りがどんどん結婚していく中で、なんとなくそんなことを考えてみる。ちらりと見つめた先には機嫌のいい男がバターの香りがするフライパンを動かしながら何やら美味しそうなものを作ってくれている。
「…なに?」
「え?」
「さっきから視線を感じてんだけど。言いたいことあるなら言って。」
「言いたいこと…ないけど。」
「…ったく、俺に嘘つけないってそろそろ学んだら?」
あさりとほうれん草のバター醤油パスタが出てきた。翼が好きな組み合わせだ。バターの香りの原因はこれだったのか。湯気の立つ皿をテーブルに置くと、遥は翼の隣に座った。
「どうしたの?」
まじまじと目を見つめられれば自分に逃げ場などないことも知っているし、そもそも遥から逃れられないことも知っている。しかし、この二人きりの空間で自分の方から結婚の話題を出すなんて無理にもほどがある。
「…い、言えない。」
「なんで?」
「さすがに気まずくなりたくないから。」
「何言われたって気まずくならないから。」
ポンと頭の上に乗った手が、髪を軽く撫でる。
「なに。ほんと、どうした?」
この優しい声に何度懐柔されたことか。悔しいけれど、この声とこの目とこの手に勝てると思えたことがない。そして今日も今日とて、負けてしまう。
「…け、結婚。」
「結婚?」
翼は頷いた。
「…結婚のこと、考えてたの。」
言ってしまって、かあっと顔に血が集まってくるのを感じた。恥ずかしすぎる。まるで結婚したいって思っているみたいだ。
「うん。それ、そんな恥ずかしがること?」
「え?」
顔が熱いままだとわかっていたけれど、顔を上げた。
「俺もよく考えるよ。口に出さないだけで。」
意外すぎる返しに、余計に顔が熱くなる。そんな翼を見て遥は、口元を小さく緩めた。
「一緒に住んだらどんな感じかとか、結婚したらどんな風になるかとか、まぁ色々考える。結婚するとしたら翼とだし。」
「そ、そうなの?」
「浮気してんのかよ。」
「してないに決まってるでしょ!」
「じゃあさっきの返しおかしくね?そうなのじゃなくて、そうだよね、だろ。」
…確かに。遥が正しい。