あ、あ、あ愛してる「君に伝えたい思いをこめて」
下りエスカレーターと上りエスカレーターがすれ違い、あたしは思わず上りエスカレーターを振り返った。

刹那ーー。

バランスを崩し体がぐらりと揺れた。

「あっ!!」

落ちる!! と思った瞬間。

あたしの目に、エスカレーターの手すりをサッと飛び越えてくる青年の動きがスローモーションで見え、ギュッと強く抱きしめられた。

ふわり、体が浮いたかと思った次の瞬間。

エスカレーターの最下段、フロアーに着地していた。

「あの……ありがとう」

あたしは落ちると思った恐ろしさでドキドキしながら、ギュッと抱きしめられたままグリーンフローラルの優しい香りを吸い込んだ。

「か花音ーー」

聞き覚えのある掠れた声が、そっと囁く。

ーーえっ!? 和音くん?

「よ予定よーり、びび便をは早めてきー帰国した。き、き帰国のじじ情報がもー漏れてて、つ捕まりたくなな、なかったから」
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