駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて

髪をぐちゃぐちゃにかきむりし、突然、体を反転させ枕に顔を埋めた男は、大人気なく足をバタつかせていた。

私は彼に何かしたのだろうか?


ただ、名前を呼んだだけで、彼の今の言動の理由が思い当たらずしばらく成り行きを見守るが、足をバタつかせるなんて、とても30男のすることじゃないと吹き出してしまった。


「…笑ったな…」


すると、照れ臭そうに顔だけこちらを見た彼の耳は赤くなっていた。


「いえ、笑ってすみません。部長じゃないみたいで、つい…」


「優也だ…それにいつもの俺じゃないって言うなら、そうさせているのは、りいさだってわかってるか?」


一瞬、ムッとした表情から子供のように拗ねた声で甘えてくる。


「私のせいですか?」


「そうだ。いちいちすることがかわいいんだよ」


かわいい…って


「私、28歳なんですけど」


嬉しいやら、複雑やらで身を乗り出して答えたら、自分の上半身が露わになっていた。


「歳なんて関係ない。りいさだから可愛く見えるんだろうな…ところで、誘っているのか?」


「…えっ、え、ええーえー。どこ触っているんですか!」


ペシッと胸の膨らみを覆う手のひらをはたいていた。


「散々、触ったのに今更だろう⁈」
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