駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
偽る恋人達の試練?

今まで見たことのない蕩ける笑顔にドキッとする。


こんな笑顔ができたんだ…


女性達に向けていた笑顔と明らかに違う笑顔を見て、先程まで思い悩んでいたことなんて飛んでいく。


好きだと言えなくても、自分だけに見せる表情を独占できる喜びに、こんな関係になってよかったと思ってしまう辺り、救いようのないバカだと思う。


嬉しさに緩む口元を引き結ぶが、すぐに緩んで、また引き結び直すの繰り返し。


こちらの思考なんてお見通しとばかりに、蕩ける笑顔から意地悪な笑みに変わる男が、頬に手を添えてくる。


「んっ?りいさは朝の挨拶をしてくれないのか?」


甘みを含んだいい声に負け、引き結んでいた唇が開いていた。


「おはようございます…部長」


「部長はないだろう?なんて呼ぶんだったか覚えているよな?」


頬から唇に移動した彼の指が唇の上をなぞる行為が、昨夜の情事を匂わせているようで、一気に茹だったように体中が熱くなり、ゴクンと生唾を飲み込んで間をおいてから答えた。


「…優也?」


見つめる視線から目を逸らすこともできず、改まって呼ぶと照れ臭さく疑問符がつく。


「…あーもう、なんだよ。お前は俺をどうしたいんだ」
< 53 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop