月が綺麗ですね
「お待たせしました」


車内で待機していた木下さんに声をかけて、副社長専用車へと乗り込む。


「じゃあ羽田へ向かいますね」

「はい、お願いします」


車は夜の街へと走り出す。

木下さんは50代半ばで、副社長専属になってから長いと聞いていた。


「副社長も大変だけど、進藤さんも大変ですね。せっかく飲んでいたのに呼び出されちゃって」

「...いいえ。木下さんだってこんな時間に呼び出されて大変ですよね。私、臭いしますか?」

「ええ、タバコの臭いは消えたみたいですが、お酒の臭いが少し」


慌ててミネラルウォーターのキャップを開ける。


「異動になってあまり日もたっていないし大変でしょうけど、こんなことはしょっちゅうですよ。うっかり飲めないです」

木下さんは笑う。
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