シンさんは愛妻家
「シンさん久しぶり、猫も元気?」とリュウが桜庭を退けて隣に座る。

「ああ」

「猫を放って置けない女の子を放っておけなくて、猫ごと家族にして、
家も庭の広い戸建てに買い換えたんだろ?」

「…洗濯物や布団をを外に干したいって言うから…」

「キャンプやバーベキューによく行くんだろ?」

「…イブキも夏香も喜ぶし…」

「飲みにも行かないんだって?」

「…子どもの世話って大変だろ。帰って風呂ぐらい入れないと…」

「美味しいご飯も作るんだろ?」

「…俺が作った方がはやいし…」

「掃除もする?」

「好きなんだよ」

「奥さんにマッサージもするんだって?」

「だっ、誰に聞いた?!」


リュウが僕の後ろを指差す。

「ご、ごめんなさい」

とイブキが真っ赤になって立っている。その隣には果歩とナナコちゃん、それに東野桜子。

僕が赤くなった自分の顔をグラスを持っていない片手で隠すと


「シンさんの手料理が食べたい」と桜子さん。

「シンさんってやっぱり優しい。見習ってほしい」と果歩。

「シンさんって愛妻家ね。」とナナコちゃん。

「愛妻家か。」壮一郎。

「愛妻家ねー」と桜庭。

「シンさんは愛妻家」とリュウがクスクス笑う。


周りにからかわれ、僕は憮然とグラスの中身を飲み干した。


みんな、オトナなのでいつまでもからかうわけじゃない。

それぞれのパートナーと仲よさそうに寄り添いながら顔を寄せてパーティーを楽しんでいるようだ。



イブキは真っ赤になりながら隣で幸せそうに僕を見上げている。

僕はそれだけで幸福な気持ちが胸に溢れる。

「マティーニ、もう一杯」

とバーテンに頼む。

今日は酔ってもいいだろう。

どうせ、ここに泊まる予定だ。



僕はイブキを抱き寄せ、

「愛してる」

と囁いた。


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