拘束時間   〜 追憶の絆 〜
母の墓標に「又、来るよ」と告げた彼は、愛息子の小さな手を繋いだ。そして私も反対側の我が子の手を取り親子三人並んで歩き出そうとした時、ホワイトリリーの花束を抱えた白髪の紳士が私達の方へ向かって歩いてきた。

その紳士はシャーロットさんの、お墓の前で立ち止まり怜斗に声をかけた。

「Excuse me. Are you a woman of the family to sleep in here ?」
(失礼ですが。この、お墓で眠る女性の家族の方ですか......?)

そう、怜斗に問いかけた紳士の瞳は琥珀色をしていた。

「Yes. Here is my mother's grave.」
(はい。ここは、僕の母の墓です)

「...... You are whether the son of Charlotte?」
(......君はシャーロットの息子なのかい?)

自分と同じ、そして母と同じ琥珀色の瞳を持つ紳士に、ただならぬ縁を感じた怜斗は。紳士の瞳をしっかりと見据えて、静かに頷いた。

すると怜斗の答えを聞いた紳士の瞼から涙が溢れて、老齢の痩せた頬をゆっくりと伝った。

「Oh......!dear my little prince!」
(ああ......!親愛なる私の小さな王子.......!)

彼はそう言って、涙ながらに怜斗を抱きしめた......。


怜斗のお母さんのお墓の前で彼を抱きしめた、琥珀色の瞳を持つ白髪の紳士こそ。

シャーロットさんの父であり、怜斗の祖父。

怜斗の祖父にあたる、その人物は。イギリスの貴族で伯爵家の当主。ローレンス・マイヤー伯爵であった。

怜斗の母、シャーロットさんの身元は伯爵家の令嬢だったのだ。

彼女は許嫁との結婚が嫌で。ある日突然、屋敷を飛び出したそうだ......。

そしてカナダへと渡り、そこで怜斗のお父さんと出会い身ごもった。

つまり、怜斗はイギリス貴族の血を引く、伯爵家の令息ということになる。

そう。怜斗は、本物の王子様だった ーー。

< 134 / 136 >

この作品をシェア

pagetop