拘束時間   〜 追憶の絆 〜
『..。..。.新しい命.。..。..』

from......『怜斗』

 彼女に長らく真実を隠していたこと、彼女を傷つけたこと......。

 そのことに蓋をして、

 俺が彼女と暮らすあの部屋を出てきた時に真っ先に思っていたことは、目先の彼女の身の安全だった。

 これからの俺達のことよりも、彼女は今夜きちんと眠れるだろうか?

 そして、寂しがりやの彼女をあの広い家に一人にさせてしまっているということが、俺の胸を潰していた。

 部屋の外に出ても俺は、暫くその場から動かなかった。

 沙綾が又外に出て行くのではないかと、心配だったからだ。

 このまま、部屋の外で一夜を明かしてもいい。今夜はここで彼女を見守ろう......、そう思った。

 だけど、それじゃあ......、

 俺から離れたがっている彼女の気持ちを無視することになるし、それに今の俺には彼女の傍にいる権利がないと思った......。

 だから、俺は一人でマンションの外に出た。

 中心部の真夏の夜は深夜をまわっても相変わらずの活気で、喧騒が鼓膜にまとわりついて鬱陶しい ーー。

 俺は、足早に今夜の寝床を探した。

 休日のシティホテルは、どこも満室で。空いているとすれば、スイートルームかエグゼクティブルーム。

 金に『糸目』とか、『物を言わせる』という言い方は俺は好きではない。しかし、さすがに。こういう時は、ブラックカードなんてものも少しは役に立つんだなと思った......。

 独りには広すぎるスイートルームの窓から覗く寂れた夜景。

 彼女を残し出てきたマンションを眺めて思う。

 ーー 沙綾、頼むから部屋に居てくれ......。

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