真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
「赤み、だいぶ引いてきたね。ヒリヒリしない?」

「うん、大丈夫。ありがとう......」

「良かった。火傷してなくて」

妄想が暴走した果てに自業自得で、とんだヘマをした私を広務さんは迅速に介抱してくれた。

新妻気取りで得意げになった自分が恥ずかしい。不覚にも彼に迷惑と心配をかけて、爽快な朝を台無しにしてしまった。

イケメンの広務さんが、奇しくもアマガエルのような体勢で椅子に座った私の前に屈み、氷を包んだフェイスタオルを魚肉ソーセージと同じ色になっている私の大根のような太ももに、あてがう姿は、とても見るに忍びない......。

「ごめんなさい......」

イケメンと、その彼が住むハイソな高級マンションには、あまりにも相応しくない間抜けな光景を作り出してしまったことを堪らなく申し訳なく思った私は、肩を竦めて小さくなって謝った。

「なんで謝るの? 優花が謝るなら、俺も謝る。俺がコーヒーを入れれば良かった。ごめん。エプロン付けてキッチンに立ってる優花が、かわいくてつい見惚れてた......」

たとえアマガエルのような滑稽な体勢で放ったとしても。彼からの甘い言葉は決して的を外さず、私の胸をキュンと打つ。

私のハートの真ん中を見事に射抜いた広務さんは、”ドキンッ”と、硬直した私を一人残し「ちょっと待ててね」と言ってキッチンを出て行った。

そして、再び戻ってきた彼の手に握られていたのは、切り傷、しもやけ、擦り傷にも効く、あの有名な黄色い軟膏。

「これ、火傷にも効くって書いてあるから。少しベタベタするかもしれないけど、塗っておくね。足は、これで大丈夫かな......? スカートは会社へ送って行く途中でクリーニングに出して......。時間が、まだ早いから一度優花の部屋に寄って着替えたら、会社まで送って行くよ」

「うん。ありがとう......」

私は彼に、おとなしく軟膏を塗られながら、子供のように素直に頷いた。

広務さんは、やっぱり。すごく優しくて、本当に頼もしい男(ひと)......。

突然起こったハプニングに一切戸惑うことなく、テキパキと理路整然と問題を解決して行く彼に私は鼻の下をだらしなく伸ばしながら、如何に自分が広務さんに溺れているかを悟った。

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