真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
彼が言った”ヤろっか”つまり、それは一緒に朝ごはんを作ろうという意味で。昨日の夕食と同じく今日も二人の共同作業でオムレツにフレンチトースト、そしてサラダにコンソメスープという完全洋食スタイルの朝ごはんが完成した。

「ごちそうさま。美味しかった」

「おそまつさまでした。今、コーヒー入れるね」

ああ。そういえば。小さい頃憧れていたアイドルの曲で”モーニングコーヒー飲もうよ二人で”っていう歌詞があったっけ。

大人になった今、まさしく私は恋歌の世界を体現してるんだなぁーー。

私は国民的アイドルのヒット曲を脳内再生させながらニヤリすると、熱々に沸騰したお湯で抽出したコーヒーが入ったポットを持ちながら、ダイニングテーブルに軽く肘をついて頬杖をつきながら私のエプロン姿を眺めている彼をチラリと見た。

広務さんは私と目が合うと少し下目遣いに緩く微笑んだ。私は彼と視線を絡ませたまま脳内恋歌を再生し続け、最も好きな歌詞”あなたについて行くと決めた”の部分を心の中で彼へ贈った。

「優花っ!」

私が逆プロポーズまがいの言葉を贈った途端、どうしたことか、彼は慌てた様子で眉間にシワを寄せて怪訝な顔を示した。

どうしたの? 広務さん!? 突然眉間にシワなんか寄せて......! ”あなたについて行くと決めた”ーーこれダメなの? 私、広務さんについて行っちゃダメなの??

彼の眉間のシワに私の恋心は悲しく反応する。私は今、彼のしかめっ面にパニック状態だ。まるで自分が、今どういう状況に置かれて何をしているかさえ分からない。

「あっ!......熱っ......!」

......迂闊だった。

結局、妄想に調子付いて手元を見ずにコーヒーを入れていた私は、ガラス製のコーヒーポットを迂闊にもカップにぶつけてしまい、その反動で倒れたカップからこぼれた熱々のコーヒーをスカートに思いっきり浴びてしまった。

「大丈夫っ!!?」

広務さんが眉間にシワを寄せた理由は、足に熱々のコーヒーが掛った私が火傷したんじゃないかと、心配してくれたからだったのね......。

「早く冷やさないと!!」

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