真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
大通りと裏通りを分断する十字路で私は来た道を戻るのか、それともまだ見ぬ道を行くのか決められずにうろたえていた。

都会の人の足は速くて、立ち尽くす私を追い抜いていった誰かは、いつの間にか何十メートルも先を歩いていた。

私も歩かなくちゃーー。

いつまでもこうしてはいられない。

先に進まなくちゃーー。

私はバッグを掴む拳に力を込めて、勢いよく利き足で踏み出した。向かう先は広務さんがいるカフェとは反対方向の歩道橋を渡った先にあるドラッグストア。

きっと、これからの未来を握っているのは、まだ何の音沙汰もない小さな命。

もし本当に妊娠していたら、私は母親としてお腹の子の事を一番に考える。そうすれば、おのずと進む道も開けてくる。

妊娠しているかどうか。早く、はっきりさせないとーー!

今までの恋愛でセックスをする時に避妊を怠った事はなかった。それどころか、恋人以外の男性と身体の関係を持った事もなかった。

愛していない男(ひと)の子供を身ごもることは、究極の自虐行為だと思っていた。

しかし、いざ自分の胎内に小さな命が宿っていると思うと、想像していた事とは全く別の感情が胸の奥から溢れ出してきて止まらない。

”愛おしい”

母性本能は良い母親の土台だ。

ドラッグストアに着いた私は脇目も振らずに、妊娠検査薬の置いてあるコーナーへ急いだ。

”30秒でスピード判定”

”99%以上の正確さ”

こんな簡素なもので本当に、お腹の赤ちゃんの有無が分かるの?

私は摩訶不思議な気持ちで妊娠検査薬を手に取ると、カタカタと2回ほど意味もなく箱を降った後レジへと向かった。

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