真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
鬼気迫るジークの言葉に、私は返す言葉を失い、胸の奥が締め付けられたように苦しく窒息しそうな衝動に襲われた。

こんなに真剣な眼差しと口調で伝えられたって、もう私には、どうすることもできない。

ジークへの恋心は過去のもの。

......それなのに、私は。

とにかく。今は早く、この部屋から出てジークと離れなきゃーー! 

......もし、また迫られたら、逃げ出せる自信がない。 

「私......、きっ、着替えたら帰るからっっ!」

触れられた余韻が抜けない身体で、私は”しどろもどろ”に、なりながら必死に強がり、ジークに宣言した。

「どこ行くの優花、着替えるなら、ここで着替えればいいだろう」

この部屋の間取りは私の所と同じ。だから、バスルームの場所は分かる。

バスルームは鍵がかかるから、安心して着替えられる。そう思った私は、ジークの言葉を無視してバスルームへ急いだ。

個室に入り内鍵をかけた時は、それまで忙しなく動いていた心臓が、ほんの少しだけ落ち着いた気がした。そして、頭の中も先ほどより冷静さを取り戻しつつあった。

私はジークの匂いがする、大きなTシャツを勢い良く脱いだ。

今は肌を露わにしても、とりあえず安全だ。

私はホッと、息を吐き出した。

しかし、それはほんの一瞬の出来事で、私はバスルームに取り付けられた鏡に映った自分の裸に愕然とした。

鎖骨の下あたりから胸元にかけて点在する紅い痣......。

”キスマーク”

さっきジークに触れられた場所は首筋......。しかも、それはほんの一箇所。

そう思った途端に、私には全く記憶の無い、ジークが言った”既成事実”という言葉が真実味を帯びた。

私、昨夜本当に、ジークに抱かれたんだ。

広務さん以外の男(ひと)を受け入れてしまった......。

純愛に傷をつけて重い十字架を背負った私は、強い罪悪感と悲愴感に縛られて身動きがとれなくなり、鏡に映るジークのキスマークがついた自分の裸を涙目で歪ませながら見つめていた。

「優花ー? 着替え終わった??」

悲劇的な情景に終止符を打ったのは、ジークの私を呼ぶ声だった。

私はジークの呼びかけには無言のまま、ただ黙々と着替えて、昨夜と同じワンピース姿で彼の前に出て行った。

「じゃあ、私、帰......」 

「どこ行こうか?」

「は......!?」

ジークは私の言葉を遮ると、実に優しい笑顔で問いかけてきた。

「今日は土曜日で、オレも優花も休みなんだから。デートするのが当たり前だろう」

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