真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
「当たり前って......。どうして、そうなるの......っ」

恋人に向けるようなジークの優しい笑顔に、私が辛辣な言葉を投げて強く反発したのは、広務さんと私の関係性を守るため。

でも。本当は、既に手遅れなのは分かっている。昨夜、ジークに身体を許した私の言葉など、彼にとって何の効力も無い。

そして、主導権を握っている、ジークの確信を突いた一言が私を黙らせた。

「だって、もう。優花は、オレのものなんだから......」

ジークは事実上、私を手に入れて主導権を握っているにもかかわらず、まるで叶わぬ夢を乞い願うかのように切ない眼差しを向けた。そんな彼の眼差しに、私は自分の心が揺さぶられた事に気がついて、嫌気がさした。

揺れた私の気持ちに一瞬の隙を見出したジークは、力づくで一気に攻め落とそうと、私の腰を荒々しく抱いて自分の腹部へと強く引き寄せた。

「やめ......て......っっ!!私......っ、ジークのものじゃなっ......っ」

無理やり唇を塞ごうとするジークに私は必死に抵抗する姿を見せながらも、堂々と”私はジークのものじゃない。私は広務さんの恋人”と、言う事が出来ずに、悲しくて涙が流れた。

スーッと降りる涙の感覚が頬に伝わった時、それまで私の腰を執拗に抱いていたジークの手の感触が消えた。

私は、まるで嵐のようだったジークが、今度は異様な静けさを湛えている事が気になった。

しかし、それ以上に自己防衛本能が働いた私は、ジークの様子に目もくれずに彼を振り切って逃げた。

「優花っ!!」

玄関を飛び出した時に聞こえた、ジークの声は酷く焦っているようだった。

私は自分の部屋に戻ると窓を閉め切り、カーテンを閉めて、うずくまって泣いた。

初秋の柔和な日差しが遮断された部屋は、暗く冷たく。重い十字架を背負った私ごと、奈落の底に沈んで行きそうだった。

のしかかるような暗闇の中で、予期せずに軽やかなメロディーが鳴り響いた。

ーー広務さんからの電話だ。

私は震える指先で、着信画面をゆっくりとなぞった。

「も......っ、もしもしっ......」

「もしもし。あれ......? 優花、もしかして風邪ひいた? なんか鼻声だけど......」

「......ん? そう? うん......。ちょっと、鼻水出てるかな。......えへへっ」

本当は泣いていたことを隠さなければいけない事と、泣きつきたい心を隠して笑わなければいけない事に、私の胸はズキンと痛んだ。

「大丈夫?? 鼻風邪だけ? 頭は痛くない? 熱は? ......頼むから、この土日は家でゆっくり休んでて。その代わり、俺が出張から帰ったら、優花の行きたいところに、何処へでも連れて行くから」

広務さんの温かい優しさが、胸の奥に切なく滲みる。

「......ん、分かった......」

私は涙声が込み上げてくる喉元を押し潰して、彼に小さく返事をした。

「優花」

「ん......?」

「泣いてたの?」

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