終わりで始まる進化論~第一部~

「羽柴、入るわよ。って、何よ……もう全員揃ってるじゃない」






腰に手を当てていかにも偉そうな小柄な少女が、あろうことか羽柴の許可を得ず入り込んできた挙げ句に、彼にタメ口を聞いている。







燃えるような赤い髪が印象的で、白いリボンでツインテールにしている少女は気が強そうな瞳ではあるが、小柄な事もあってかその強気さが愛らしい猫のような雰囲気である。






女性というよりは、女子という表現が似合う体は黒っぽいロリータ風のドレスすらも似合っている。漫画の中から飛び出してきたような風貌だ。






こんな子がいきなりあの嫌味な狐に、皮肉の詰め合わせとしか思えないお説教を受けるのは忍びない気がした。






「ごめんね、今取り込み中だから俺らの話し合いが終わってからでも良いかな?」





ナツキは立ち上がって少女の目の前に移動して彼女の頭に手を添えて思わず撫でてしまった。





上目使いで睨み付けられた気がしないでもないが、猫は多少慣れるまでは警戒するとも聞くし、子供にそこまで強く言いつけるのも可哀想だ。






「……お、お前何やって……」





シノミヤが明らかに動揺しているように見えるけど、きっと子供嫌いなのだろう。こんなに可愛らしいのに……まあ、目つきが悪いからシノミヤの場合は怖がられそうだ。






「--けなさいよ」



「え?」



「その手を退けろって言ってんのよ!」




少女が何か言ったような気がして身を屈める様にして問いかけようとした瞬間だった。




恐らくは少女にしては不似合いな超高級ブレンドバッグで視界も揺らぐほどの威力で殴られたナツキは、勢いよく床に倒れ込む。





一瞬何が起きたのか理解できなかったが、見上げると小刻みに肩を震わせて真っ赤な顔で見下ろしてくる少女の姿だった。





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