終わりで始まる進化論~第一部~
「シノミヤがもし指揮官だったら、羽柴さんみたいには言ってくれないだろうな、と思っただけです。あいつなら、<死ぬ気で暴れて来い!>って下手したら、それこそ俺の背中を撃つ勢いで、怒鳴られそうだなって思って」
自然と目つきの悪い金髪の同僚の顔が浮かんできた。不機嫌そうな普段の顔を余計に顰めて怒鳴ってくる様子まで想像できてしまう。
それは恐らく羽柴もだったのだろう。通信機越しに彼もまた笑っているようだった。
「シノミヤ君は言いそうですね。対等に扱おうとする彼なりの優しさですよ」
「そうかなあ?」
あの短気な同僚は、そこまで考えているだろうか?疑問を口にしたところで、羽柴から肯定の言葉を返される。
「彼はとても情に厚い子です。私の方が……いえ、今はそんな事よりも、目の前の事をやるのが先決ですね。ナツキ君、無茶はするなとは言えませんが気を付けて下さい」
「分かりました」
シュタールアイゼンの出力は最大のまま、蝶のセカンドタイプへと向かう。
背中から大きく生えた羽が金粉のような物を撒き散らしていた。
出力最大の状態をキープし、シュタールアイゼンで蝶への間合いを詰める事は可能だ。しかし、確実に仕留めなければ近距離で毒粉を浴び続ける事になる。
だとすれば、死角を狙う。羽柴もその考えでいたらしく、ナツキの提案を実行する方向で簡潔な作戦会議が進んだ。
「弱点は分からないけど、羽を攻撃できれば毒粉は止められそうかな」