cold tears





「......ルカちゃん、もし、好きな人が出来たら...気にしなくていいからね?...政人の事。」






そんな事...あるはずもない。






「私ね、政人から、ルカちゃんにプロポーズしたって聞いて、凄く嬉しかったの。

......ずーっと妹みたいに可愛がってた子で、私も美瑚もお母さんもお父さんも結婚楽しみにしてた。」





少し間を開けて絵美さんは続けた。




「ルカちゃんは、これからの人生の方が長いの。......政人がいなくなってから心から笑えてる?」





心から......そう言えば最後に笑ったのはいつだっけ。





いつも自然に笑えていたあの頃の面影はもうない。





ただ筋肉が頬を支えている、それだけの行為。






「そんな簡単に言うなって思ってると思うけどね、......政人の事、一番に思い続けなくていいのよ。ルカちゃんはもう十分、政人の事一番に思ってくれてたんだから、ね?」






涙腺が少し緩んだ気がした。でも、やっぱりまだ泣けなくて。
そんな私をぎゅっと抱きしめる美奈さんも震えてて。
美奈さんの方がつらいはずなのに、こんなにも強くてかっこいい。
早く前に進みたい。







少ししんみりとした空気を切り替えるように、美奈さんが持ってきてくれたケーキとシャンパンをテーブルに置いた。








二人で食べる甘いはずのケーキはほんの少ししょっぱかった。







< 20 / 43 >

この作品をシェア

pagetop