God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
「頼むゼ~、ブラザーK」
次の日の事だった。
とうとう来た。
昼休み。
メシを喰らうのもそこそこ、「第1回作戦会議。有志は3組に集合」と重森に呼び出される。
それこそ誰も居ない時間と場所にしてくれればいいものを、ランチタイムで賑わう3組、俺のクラスに早速やってくるとは……とうとう情報解禁か。
教室を見渡せば、半分は外に消えたものの、女子の弁当団が3つ。男子は大人しく10人程が散らばっている。
さっそく、バスケ部の女子が無邪気に近づいて来たかと思うと、
「男子ばっかで何やってんの?あやすぃぃ~」
「オンナは邪魔すんな。向こう行け」
重森は一喝して追い払った。
女子はサッと顔色を変えて、
「ちょっと言っただけじゃん。マジむかつくんだけど」
バスケ部といってもその女子は、吹奏楽部を真っ向から敵に回すほど、そこまで強い個性の持ち主では無い。本人も言うように、単に言ってみただけ。イジっただけ。フザけただけ。
このやり取りはその女子だけではなく、その周辺の女子群をも敵に回した。
バスケ女子3人組は、「行こ」と、これ見よがしにプイと出て行くし、そこら辺の男子も女子も嫌悪を一斉に露わにする。
少なくとも半径5メートル以上、人類は遠ざかった。
印象、最悪。
あちこちから椅子を引っ張り出し、俺の席を囲むように、重森軍団はその位置につく。もう逃げられない。
途中のまま、俺は弁当を閉じた。アクエリアスと覚悟を同時に飲み込む。
軍団っても、集まった有志を見れば、男子が2人、俺を入れても3人だけ。
これだけ。
1人は、「おやおや沢村クン。さっそく生徒会がスパイ偵察ですかぁ?」と、オドけて俺の肩を揉みながら、「ま、今日は応援2人っきゃいないけど、僕ら部員は交代で務めるから。これから他も色々来ると思うけど」と恥ずかしそうに、少人数の言い訳をカマした。
それを聞いた重森は眉間にシワを寄せて、「だからって、最初の会議に出て来ないって、どういう事だよ。たるんでる証拠だ。この選挙がどれだけ大切か、分かってない」
「しょうがねーだろ。みんなそれぞれ忙しいんだから」
「つーか重森ぃ、突然過ぎるだろがよ。こう言う事はさ、昨日のうちに言ってくれよな」
この時点で分かる事。初日から、チームワークは最悪。
「じゃ、今日はとりあえず顔合わせ。紹介しておこう」
やっぱり解禁であったか。
「俺の応援に加わってくれる第一号、沢村洋士」
その瞬間、周囲の空気が粟立った。俺はそう感じた。
「スゲーだろ。最強」と、重森が笑う。
マジか!?
一瞬の沈黙の後、部員2人は一斉に弾けた。
その声に、5メートル先で遠巻きにしていた周囲も反応して、「何?まさか転校生?」「この次、自習?」「まさかの、のぞみちゃん結婚?」と、それぞれの思い描くサプライズをひけらかしながら、何だ?何だ?とユルユルと集まる。
重森は両手をポケットに突っ込んだまま、ツンと澄まして立ち上がると、
「おまえら聞け。俺は3組、このクラスを拠点にして選挙に出る」
周りは、知りたい訳でもないのに勝手に知らされて、それが何?と言いたげに空ろになる。
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