God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
おっぱいと下半身の放送禁止地獄絵巻
〝学校を辞めます〟
それだけで、もう説得力があった。
『右川カズミさん。退路を断った、覚悟の立候補』
校内新聞には、そんな見出しが躍っている。
阿木は、右川に確かめたのだろうか。まだ真相は聞こえてこない。
あれは右川のハッタリ……そんな事を言ってくれる奴は、阿木以外、1人も居なかった。
「学校を辞めるって、そこまで言うんだから本当だろ」と世間は口々に言う。
2月15日。
投票締切は明日16日の昼休みまで。
もう2日も無い。明日の放課後には結果が出てしまう。
それなのに。
残された時間、俺達は、こそこそ隠れるように選挙活動をする事になって……意味が無い。
写真もポスターも、イタズラ書きで埋め尽くされて……悲惨だ。
どこに行っても、半分疑われている。
俺も永田も重森も、声を揃えて、「自分は犯人じゃない!」と、まず弁解する所から演説は始まった。
俺達が必死で説得している所に、右川がちんたら、やってくる。
すると周りは自動的に右川に群がり、「今の心境は?」「何されたの?具体的に」「犯人に何か1言!」と、まるでテレビのワイドショー・リポーターの如く問い掛けた。
みんな、お祭り気分で楽しんでやがる。
「おい……右川の1番親しい友達って誰だ?そいつなら何か知ってるはずだろ」
次第にそれは、右川の身辺調査にまで発展か。
「確か、1組の家畜。松倉だ!」
その家畜は家畜で、「そんなの内緒だよぉー。ヤバいもーん。右川、また襲われるってー」
いつもの、伸びきった抑揚の無い声で、のんびり応戦している。
こんな衆人環視・厳戒体制の中、右川を襲うなんて芸当、出来る訳が無い。
「昼休み。いつものように中庭でビラを配ろうよ」
桂木は、応援団にキッパリと言った。
「え。ヤバくない?」「今は大人しくしといた方が」
臆するメンバーに向けて、
「いつも通りやろうよ。そうじゃないと、怖気づいたと思われて、逆に犯人扱いされちゃうよ」
桂木の言う事も、もっともだと納得して……応援団はたった10人が残った。
「僕らが10人分、動けばいいんだし」
「そうだな。あと2日だしな。完全燃焼。ゴーーール!」
ノリと桐生。桂木に、「ちょっと。泣かないでよ」と笑われて、お陰で涙は出る前に引っ込んだ。
その昼休み。
出たら出たで、新しい地獄の幕開けである。
中庭は、ネガティブの坩堝であった。
「「「「「絶対、沢村だ!おまえら、そんな奴に投票していいのか!」」」」」
おまえらはいつの間に、そこまで仲良く合体したのか。
有権者に訴えているのは、永田と重森率いる大応援団。
「絶対、沢村じゃありません!バスケと吹奏楽の陰謀です!」
「そうだよ!こういう時だけタッグを組むなんて卑怯じゃん!」
小競り合いが、そこら中で始まって……精神的に、すり減る。
双浜高はネガティブに歪んだ。
ド突かれる事はアタリマエ。ひそひそと陰口。
吹奏楽部の奏でるBGMも、ネガティブ一色。
「そんな、くだらない事に体力使う暇があったらラストスパート。票田を獲得して歩こうよ」
桂木の声に、みんなは力なく頷いた。
決して、嫌がらせに屈服した訳ではない。
負けイヌのように逃げ出した訳でも。
だがメンバーは、重森を永田を、吹奏楽部員をバスケ部員を、もう見ただけで怯えてしまって……現状、何一つ進展の無いまま、アッという間に放課後になった。
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