God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
「沢村、大丈夫?」
水場で項垂れていた所に、桂木がやってきた。
「ハイ。ミルクの、あめちゃん」と、1粒。
「何とか、元気……ありがとう。関西人」
せっかく残ってくれた桂木に、せめてカラ元気くらいは吹かそう。
正直、さすがの桂木も凹むだろう。教室一杯、あれだけ居た応援団は、とうとう5人となった。ノリは残ってくれた。桐生は、「先輩に言われちゃって、ゴメン」と、後ろ髪引かれる思いでありながらも、去ってしまう。グレーのうちは、表だって応援できないと言う事だろう。恋のライバルが、疑惑の渦中とは……一緒に居る事自体が、もはや何の意味もない。
「沢村、大丈夫?2回目だけど」
そう呟く桂木の方が、顔色が悪い。水場の側、縁石にぼんやりと腰かけて宙を見つめている。
俺も、その隣に座った。
桂木は、まるで倒れるように、その背中を預けて。
「ごめんね。どうにも出来なくて」
桂木のせいじゃない。
真相を、桂木には話せないという事も含めて、「いや、俺の方がごめん」
残るは、明日のお昼休みまでの半日だ。それでどこまで挽回できるだろう。
「あのさ。今から、暇?」
ここで桂木は、右川に直談判!を主張。既に、これから生徒会室で会う約束にしてあると言う。当然というか、俺は気乗りがしない。1つ間違えば、これは藪ヘビだ。
「だいじょぶ。阿木さんも一緒だから」
さらに、倍。
だいじょぶ、じゃない。
この所、生徒会作業もご無沙汰。選挙活動でそれ所じゃない事に加え、浅枝も最近は俺というより阿木に何でも相談するから、お役目御免とも言える。
それが少なからず寂しく感じると共に、この所、やけに2人がツルんで俺を向こう側に置こうとするのは気のせいか。特に、あの1件、以来。
桂木も然り。俺の居ない所で女子同士、何を言い合っているのか。
こう言う時思うのだ。女子の、そういう繋がりは、男子にとって最も痛い。
行けば、さっそく右川と阿木が居て……まさか、今ここで、あの真相を確かめているとか。言うなよ、おい。
見ていると、どうも、そうではなさそう。
2人はお菓子をツマみながら、「昨日のバレンタイン、どうしたぁ?」と、阿木が一方的に、右川から質問攻めに合っていた。
いきなり本題も何だと思ったのか、桂木も、「なになに?」と前ノリで雑談に加わる。強制的に、俺も。
「沢村くんは、いくつ貰ったの?」
阿木に意味深に突っ込まれて、てゆうか、俺を巻き込んで話の矛先を変えようとしているな。
「まー、3つぐらいは」と、俺は正直に答えた。
それがまるで見栄を張ったと取られたのか、阿木には鼻で笑われる。
桂木は顔を赤くして俯くし、チビはその様子をヘラヘラと眺めていた。
女子会に男子が1人……まさに、藪ヘビ。正直、逃げ出したい。
それより阿木の事情はどうした?
話を元に戻そうとしたのだが、その先、阿木の答えを促すより先に、右川がしゃしゃり出て、
「昨日ね、アキちゃんに手作りチョコあげて、焼肉デートしてさぁー」
首に巻いた黒いマフラーをクルクルと操りながら、聞かされ飽きた惚気をブチ上げる。
「で?結局、阿木は?」
割り込んだら、右川が露骨に嫌な顔をした。
「人が楽しくお喋りしてんのに邪魔すんな。固まってろ。仏像うんこ」
女子群が一斉に吹き出す。ムッときて、いきり立ち掛けた所を、桂木に抑えられた。だが、気が収まらないので一発ぐらいはブチ上げよう。
「誰もおまえの恋バナ妄想なんか聞きたかねーよ。そのマフラー外せ。暑苦しい」
これには右川も、「あぁッ!?」と、目を剥いて怒りを露わにして……かと思うと、すぐにニッコリと笑い掛ける。嫌な予感。プロローグ。
来るぞ来るぞ。1番痛い所をガチで突いてくるぞ。
満身創痍で待ち受けてやる。
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