God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
桂木の暴走
予餞会を無事に終えて、後は卒業式を残すのみ。
寄せ書きの色紙が、あちこちから回ってきた。
自分にはこれから、生徒会で占められていた時間が、制御を外れ、塊となって一気に襲ってくるだろう。さらに勉強。さらに部活。合コンとかバイトとか。
卒業まで、思う存分楽しめると思えば、悪くない。
悪くない。
悪くない。
そう言い聞かせる度に……悪くないとは、1つも納得していないと、自分で認めるようなものだと、そんな気がしてくる。
あれから……右川の当選に異議を訴えて、案の定、重森と永田がガン首揃えて、生徒会室にやってきた。生徒会室前は、その他およそ100人ほどが詰め掛けて、「右川をリコールしろ!」と集団が大声で叫ぶという事態に陥る。
「途端にこれよ。悪あがき」と、阿木は冷静にそれを眺めた。
そのうちバスケ軍団が姿を現さなくなった。
かといって、大人しくなった訳ではない。
「これはあくまでも、一時延期だッ!断じて終結ではないッ!」
体育館では、永田がバスケ部の面々に向かって吠えている。それをバレー部のコート隅っこで同様に聞かされて、頭が痛い。
また吹奏楽部も大人しく、静かに消えて……それは都合がいいと追及しなかったが……静かすぎる。気味が悪い。
重森は、今も何かを企んでいる気がして、気が抜けないけど。
5時間目が始まるまで、まだ時間があった。
コンビニで買った相棒アクエリアスを飲みながら、映画情報誌を開く。
そう言えば、ずっとレンタルもご無沙汰だ。新作を、どんだけ見過ごしてしまったのか。
こうなったらヒマに任せて新作を梯子するか!と、後ろの男子に、「これってどんな感じ?」と、雑誌を広げて見せたら、
「あー、元乃木坂の深川ね。オレの推しメン、白石だから。興味ねぇワ。あ、〝伊藤くん〟は終わる前に見に行こうかと思ってる。偶然テレビ版見てさ。割りと面白かったよ」
「マジで?んじゃ、一緒に行く?」
「……何で?」
大して意味もなく、数秒ほど、そいつと見つめ合った。
そんなに深い意味を込めた覚えはない。
意味を見出そうとする方がおかしい。意味と言うなら、
「あれ、彼女とか?居たっけ?」
「なにそれ。嫌味か。タコ」
タコ。
久しぶりに言われたし。そいつは不機嫌とは見えなかった。どこか皮肉めいて笑うと、そこで仲間に呼ばれて行ってしまった。
特に喉は渇いていない。だが、アクエリアスを飲む。
……こう言う時、思うのだ。何かが、おかしい。
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