God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
新学期……「じゃ、帰るね♪」
サクラ咲く、春。
新学期。
額には涼しく、鼻先辺りには生温く、肩先あたりには、わずかに気恥しさと緊張が漂う。
体が、やっと春に追い付いたばかりだと言うのに、周囲はサッサとその先をチラつかせる。
3年に進級した、受験生。
運命は、逃がしてくれない。
俺は〝3年5組〟。
ノリは1組で、またしても別のクラスになってしまった。高校生活3年間、離れたまま。あれ以来、俺は未だ許されていない。クラスまで離れてしまって、今回ばかりは挽回できる自信が無かった。
永田バカ、黒川とは同じクラスだった(最悪)。
重森は、影も形も無かった(それは助かる)。
桂木ミノリが居た。阿木キヨリも居た。
右川カズミも……今度は同じクラスで、とことん面倒を見ろと言う事なのか。
新学期早々、縁起が悪い。こんなクラスで俺の受験うまくいくのか。
入学式、始業式、オリエンテーションを経て、ケモノと、強引にクラスメートという枠に押し込まれる。
「沢村ぁッ、彼女にカラダで説教しろッ。モールで駄菓子なんか買ってんじゃねーよッ」
わざわざ大声でお知らせするほどの、それのどこが、そこまで胸躍るトピックなのか。永田はいつにもましてガラガラとやって来る。
これから1年間、毎日聞かされるかと思うと、うんざりだ。
その向こうで当の桂木は、顔を真っ赤にして永田を睨むと、
「駄菓子を買ってどこが悪いのよ」と、ケンカ上等。
そこで目が合った。〝うんざりだね〟と同調意識で哀れみを仄めかすけど。
これから俺は、どうすれば。
うっかり溜め息をついたその時、仲間と同じクラスを喜びあう右川とも、目が合った。目線が1本に繋がって、そこから最低3秒、睨み合う。
……それだけ。
俺の方から目を逸らした。今は、嵐の前の静けさ。
本日の放課後。
新・生徒会長を囲んで、新しい3役が指名、任命される。
卒業した3年以外の現執行部と、会長が指名する新執行部が顔をそろえた中で発表されるのだが、改めて発表するまでもなく、やってきた輩を見れば一目瞭然。単なる顔合わせに過ぎない。
俺と阿木、浅枝の3人で、新3役の歓迎準備を始めた。
生徒会専用の腕章を渡したり、カギの管理を教えたりの、簡単なご案内。
2年前、この頃、俺はまだ書記に就いていなかった。
だから、最初の顔合わせに、俺は居ない。
浅枝にそんな昔話を聞かせていると、
「でも、その頃から松下さんは、沢村を引っ張り込むって言ってたわよ」と、阿木が、したり顔で割り込んでくる。そこに辿り付くまでには、熱意と陰謀と刷り込みが、多々あった。それは……おいおい、話してやろう。
そこに、担任で生徒会担当の吉森先生が入ってきた。
続けて、桂木が入って来た。
先生と阿木に1つずつ会釈すると、当然のように俺の隣に座る。
付き合ってるのは本当なんですね……とでも言いたげに、浅枝は動揺を隠しきれない様子だ。お望み通り、俺に可愛い彼女が出来て良かっただろ。
そこに、右川が入って来た。
すっかり春だというのに、新学期より、いまだに、あの黒いマフラーを巻いている。
「こういう時は外せ、つってんだろ」
「だって人間寒いんだもん。仏像ウンコとは違うんだもん」
「「まーまーまー」」と、桂木と阿木の両方から、「「ここは我慢」」と俺が抑えられた。何も、反応していないにも関わらず。
「わ、右川先輩、これ春ネイルですか?桜のモチーフだぁ。ヤバ~い」と、右川は浅枝に持ち上げられ、可愛いとチヤホヤされている。
そういうディフェンス体制を取るのか。
早くも、女子のチームワーク抜群だな。
今に見てろ。
俺の目つきは、さらに厳しくなった。
笑っていられるのも、甘えていられるのも、今のうち。生徒会執行部という括りの中で、もう遠慮なく説教できる。これからはガンガン行くぞ!
5人が揃った。
吉森先生はメンツを見渡して、「という事は、今年は1年生が居ないのか」と、しみじみ言った。そういう年もあるらしい。
と言う事は、俺達は3年と言えども、永田さん達みたいに、のんびりしてはいられないという事だ。
そして来年、浅枝は、自分以外の生徒会初心者を、バタバタと叩き上げる。
殆どが総取り替え。リセット。松下さんの望み通りだった。
それも悪くない。そんな気がする。
「良かったね、沢村くん。女子に囲まれて。真夜中のアニメみたいじゃん」
うっかり吉森先生を睨みツブす所だった。
ややあって、「えー。でわ、発表します♪」と、右川が立ちあがる。
新執行部。
「会長あたし。副長アギング。会計はチャラ枝さん。書記はミノリと……」
約束通り〝一緒に〟書記か。
ありがたすぎて涙が出るよ。
「1年1組の真木タケトくんで~す♪」
え? 
阿木と浅枝は目を丸くした。……俺も。
右川と約束した筈の桂木は立ち上がったまま、呆気に取られたままで居る。
そこに突然、飛び込んできたのは、制服が真新しくてピカピカの……男子。
「おおおおお、遅くなってすいませんっ!!!」
手には、分厚い楽譜と、ぴかぴかのフルートを握っていた。
生徒会3役、以上。

「じゃ、帰るね♪」







<Fin>

.:*゚..:。:. ☆o。.:*゚:.。:. ゚・*:.。..。.:*・゚ o☆.:*゚..:。:. ゚・*:.。..。.:*・゚.:*゚
第8話 予告。
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新執行部の初仕事は〝予算委員会〟

体育系・文化系・その他……予算獲得のため、あの手この手の涙ぐましい(?)忖度。
右川 VS 重森……再びの、ガチ対決。
桂木ミノリ VS 真木タケト……予想通りの、一触即発。

執行部を外されて、放り出された沢村……俺、どうなった?

ご期待下さい♪
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