捨てられなかった想いを、今
進路を決めるときも塩尻さんの言葉が脳裏にあった。
だから、声優の学校に進んで今やっと起動に乗り始めたところ。



「そう、塩尻さんの言葉があったから今俺はこうして声優をやってるんだよ」


「うそぉ……」


俺の言葉に力が抜けたようにへなへなとその場にしゃがみこむ。



「さっきからしゃがみすぎだろー。ま、濱田になんとかしてもらえよ。じゃあな」



出しかけたて手を引っ込めて、桧山が塩尻さんの肩をぽんっも叩く。



「こいつのいつも言ってるいい声の濱田さんがお前だとは思わなかったけど……お前の声で好きだって言えばこいつおちるよ」



そんな爆弾発言を残しながら、俺に手を振ってそばにある車まで歩いていく。

だから、切なく感じた桧山の想いを無駄にしないために。



「塩尻さん、立とうか」



彼女に向かって手をさしのべる。



「ありがとう」



顔を真っ赤にしながら、俺の手を取る。

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