野獣の食事

哀れな男

男の攻撃は激しさを増し、晃を追い詰めて行く。

ビール瓶を投げ、ゴルフクラブを振り回す。

「落ち着けって!オレは全く悪くないって!悪いのは神様だよ!オレみたいな男前を作ってしまったんだから!そりゃー、あんたの女もオレに惚れちまうさ!」

晃はポーズを決め、男に言い放った。

男の目は、赤く血走っているが、うっすらと涙を浮かべ始めている。

泣きながらゴルフクラブを振り回す男。

それをニヤニヤ笑いながら避ける晃。

弘はその光景を見つめながら、冷静にグラスの中のブランディを飲み干した。

弘にとって、こんな光景はいつものことだ。

晃と付き合ううえで、これくらいは、常識の範囲と弘の頭の中にはインプットされている。

「…いつものことさ」

椅子に座り、タバコを吸いながら、ブランディを飲む弘。

カウンターの中では、マスターが冷静に皿を洗う。

これがこのバーの、日常の光景だ。
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