私、今日からお金持ち目指します?
「嗚呼、そうだね。君の不満そうな顔で思い直したよ。君は似非自由人だった」

またしても分からないこと言い出した。

「どういう意味ですか!」

ムッとしながら芦屋君が訊ねる。

上条勝利は、「まだ自分の力で」と言いながら、人差し指で床を指し、右足でドンと床を踏み鳴らす。そして、微笑みを携え、「立っていないからだよ」と言う。

そりゃあ、未成年だし、学生だし、当然と言えば当然じゃない?

「言い換えれば、親のシールドの下、自由人だということだ」

芦屋君にも、その意味が何となく分かったようだ。悔しそうに唇を噛む。

「五回のセミナーの中で、僕は時間を、人物金を、大切にと言いました。それを突き詰めて言えば、時間に、人物金に、囚われない、縛られないで下さい、です」

でも、普通の人は時間にも人物金にも縛られ生きている。それが社会の中で生きる、ということではないだろうか?

「富豪たちは、それらのものから解き放たれ生きています」
「ちょっちょっと待って下さい!」

声を上げたのは巴女史だ。

「以前、上条さんは富豪たちは四六時中オファーを受けて忙しい、とおっしゃっていませんでしたか?」

「言ったね。確かに彼らは忙しい。でも……彼らは、人も物も選ぶ立場にある。当然、金もだ。選んで使う」
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