私、今日からお金持ち目指します?
セミナー終了後、精神的にグッタリ疲れていた。すぐ家に帰って寝たい! そう思っていたが、帰る前に文句の一つでも言ってやらないと、腹の虫が治まらない、とみんなの後ろ姿を見送る。

「なんだ、待っていてくれたのか?」

二人きりになると、上条勝利がニヤリと笑う。セミナー中のあの爽やかさは何処へ、と思える極悪非道並みの悪い笑みだ。

「そうです! どういうことですか、あれは!」
「あれ、とは結婚式のことか?」

当然、というように大きく頷く。

「別にいいだろう? この間、お互いの気持ちを確かめ合ったのだから」

――ちょっとお待ち! いつ確かめ合った? そんな気配は微塵もなかったぞ。

「別にすぐに結婚するとは言わなかったが……あっ、それが不服とか?」

目を見開き、ブルンブルンと首がもげそうなほど振る。

「まさか! そんなに早く結婚したくありません!」
「だろ? 俺も君と恋人期間を味わいたい」

あれっ、今、私、何か言い間違えた?

「ちょどよかった。今から指輪を買いに行くよ」
「――指輪?」
「婚約指輪に決まっているじゃないか」

イヤイヤ、今、すぐには結婚しないと言ったじゃないか! あれっ? 違う! 下条冬夏、乗せられるでない、と自分を叱咤するが、抵抗虚しく車に乗せられジュエリーショップへ連れて行かれる。
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