私、今日からお金持ち目指します?
「だろ?」と訊かれても、そんなこと、私に分かりっこない。

「そして、君を羽ばたかせるのは俺だ。他の何者でもない」

相変わらず自信満々な言い方だ。笑ってしまう。

「いいね! そうやって俺の隣でいつも笑っていてくれ。君の笑みで俺は幸せになる」

コトンと何かが胸に落っこちた。こういうのを“腑に落ちる”というのだろうか?

どう考えても、私には大勢の人を幸せにする力などない。でも……私が笑うだけで幸せになってくれる人がいる。

だったら、私を必要としてくれている人を、まず幸せにすること……それならできる。

「――私の一歩はそこから……」
「ん? 何だって?」

「いいえ」と首を横に振り、「何でもありません」と微笑む。

「ただ、上条さんとのお付き合いは、楽しくなりそうだな、と思っただけです」
「当然だろ。相手は俺だぞ。誰よりも楽しいに決まっている」

案の定、自信満々の答えが返ってくる。

「――ところで、この車はどこに向かっているのですか?」

目前に伸びるオレンジ色の街灯を見つめ訊ねると、「君と俺の幸せの未来へ」と、彼がキザな台詞を宣う。その直後、私のお腹がグーッと鳴る。一瞬の静寂。そして、真っ赤になる私とは対照的に、上条勝利が弾けるように笑う。

「本当、君といると飽きないな」

クスクス笑いながら、「まずは、君と僕を満腹にする店へ!」と言い直し、彼はアクセルを踏んだ。
< 155 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop