私、今日からお金持ち目指します?
「じゃあ、また後でね」

花嫁の控え室を出ると、壁にもたれた上条勝利の姿が目に入る。見慣れた姿、と言えども、いきなり目の前に現れると、やっぱりドキドキする。本当、嫌味なほどカッコいい。

「――今日の主役は、日下部さんと山下さんだっていうのに……」
「ん? 何か言ったか?」
「別に……いつも以上にスーツ姿が決まっているなぁ、と思っただけです」

「当然だ」と上条勝利はドヤ顔で言いながらも、私に褒められたのが嬉しいみたいだ。子供みたいな笑みを浮かべる。

彼は私と二人きりのときにだけ、こういう顔をする。それを見るたび、私も嬉しくなる。彼の心が何ものにも縛られることなく自由だ、と思うからだ。

どんな人であれ、自分が自分たる、素に戻れる時間は必要だ。富豪だとしてもだ。

彼は私を“羽“だと言った。でも、私はその羽を休める“巣”になろうと思っている。巣が居心地良かったら、きっと今日より明日、明日より明後日、彼は、より高く長く飛べると思うからだ。

小さな夢だけど、それがこの一年、彼と付き合い、見つけた私の夢だ。
でも……ただの巣ではない。だって……私は富豪の妻になるのだから。

そして、その先には、さらに煌めく“今”があり、私はそこでもっと多くの人たちを幸せにする。

そう! 彼と一緒なら、私はきっとできる!




私、今日からお金持ち目指します?
~THE END~
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