私、今日からお金持ち目指します?
「ランチはホテルに入っている有名レストランの仕出し弁当だそうだ。六回も旨い物が食べられて、いいな」

ギロリと父を睨み、「だったら、私の代わりに行って下さい!」と言うと、目の前で激しく手を振りながら、慌てて「お前の名前で申し込んであるからダメだ」と言う。

本当に食えない父だ。
こうなったら腹を括るしかない。

「分かりました。大人しく言うことを聞いて行って参ります」

ホッとする父親。

「ですが、今後、経営の主は私。お父さんもお母さんも、私に従って下さいよ!」

「いいですね!」と交互に二人を見ながら、念押しするように深く頷く。
父と母はお互いに顔を見合わせ、眉を八の字にする。

「まさか、質素倹約、贅沢は敵だ、とか言い出すんじゃないでしょうね」

お嬢様育ちの母が言う。

「当然、言います。お二人共お店を潰したくなかったら、今日から質素倹約を心掛け贅沢は敵だと……お母さん、早速、玉露を止めてお番茶にしましょうね」

そんなぁ、と涙目の母を父がヨシヨシと宥めながら「お茶ぐらい」と言うが、それを摂氏零度の視線で拒絶する。

当然だろう、人身御供のように私をセミナーに参加させ、経営を立て直せと言っているのは自分たちだ! 率先して倹約するのは勤めだろう!

背中の方で、鬼だの悪魔だの言っているが、その親は貴方たちだ! フン、何を言うだ!
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