私、今日からお金持ち目指します?
「そのセミナー、超高額じゃないでしょうね!」

だが、思った通りだった。父の返事にアングリと口が開く。

「お父さん、本当にそのセミナーを受講したら、店が立て直せるんでしょうね!」

そのお金で新商品を開発した方が、どんなに店の役に立ったか分からない。

「それはお前の学び次第だと思うぞ」

完璧に責任転嫁したようだ。全く!
しかし、受講料も振り込み済みと言われたら、渋々ながらも行かざる得ない。

「これがスケジュールだ」

手渡されたA四判の用紙を眺め見ると、受講日は計六回で全て定休日と重なっていた。それだけは救いだ。でないと、誰が店のホールに立つのだ?

「あれ? 講師は上条勝利。エッ、彼って、確か……著名な……」
「おお、お前も知っていたか!」

知っているも何も、毎年、長者番付に名を連ねている総合商社『KJ』社長、上条勝一の子息で次期社長と噂高い御曹司じゃないか!

おまけに、雑誌などで見かけたことがあるが、かなりのイケメン。ファンクラブまであるそうだ。

「彼、『伝説のマネーマン』と呼ばれているだろう?」

それは初耳だ。でも、何だそのマネーマンって、ウルトラマンの親戚みたいで、ちょっと笑える。

「だから彼が講師ということで、凄い倍率だったんだぞ」
「それに当たるだなんて、冬彦さん、クジ運がいいのね」

母の言葉に父が鼻高々になる。
でも、商売繁盛の神からは見放されている。

「フーン、エッ、午前十時から午後四時、昼食時間が一時間。エーッ、五時間も!」

授業というものから長く離れていたので、今更、ジッと机に向かうだなんて……と思わず文句が出る。それに対して、だがな、と父がご機嫌を取るように言う。
< 4 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop