私、今日からお金持ち目指します?
「だってそうでしょう。色々な人の手に触れた物ですよ。お金自体も汚いし、それを持っていた人のことを考えると……」

青年はブルッと震え、「“汚い”しか浮かびませんでした」と言う。
相当な潔癖症?

「君も穢らわしいと答えたね。どうしてだい?」

彼女もまだ若い。

「それはお金が……父の作った借金が私の人生を狂わせたからです」
「なるほど」

上条勝利が会場を見渡し、言う。

「では結論から言います。富豪になりたければ、お金を好きになりなさい! 過去がどうあれ、お金を“尊いもの”とし、大切に思わない限り、富豪にはなれません」

「でも……」と先の女性が反論する。

「尊いものが人を不幸にするのですか! 尊いものは人を幸せにするものじゃないですか!」

“尊い”にも様々な意味がある。『非常に価値があり貴重だ』という意味や『地位や身分が高位で高貴だ』という意味など。

女性の言っているのは後者の意味だろう。確かに彼女の言い分は正しいが……上条勝利は過去はどうあれ、と言った。

それはおそらく、「過去を捨てよ!」と言っているのだろう。
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