私、今日からお金持ち目指します?
そんな甘々な両親が、先代より受け継いだ我が店にはイートインコーナーが十五席あるが、主となるのは店頭売りだ。

二年ほど前だっただろうか、姉たちの提言でイートインコーナーがセルフになった。

今、レジとホールは私一人が担当している……のだが、よく考えなくてもだ! いくらセルフサービスにしたからといって、ひとりでホールが回せること事態、すでにもう風前の灯火だった、ということだ。

……ということは、姉たちは客の激減を知っていた。だから、セルフを勧めたとすれば、かなり前からその状態だったことになる。

なのに……私はそのことにも気付かず、大学生活をノウノウと送っていた。本当に大馬鹿ヤローだ。



そんな事を思い出しつつ反省しながら、回転扉からホテルに入る。

開始時間より一時間早いが久々の外出、学びのため、ラウンジでケーキでも、と思ったのだ。

「えっと、セミナーは……」と、場所だけでも確認しておこうと、入り口近くにある電光掲示板に目をやるが……。

ん? セミナー名が無い。

おかしいな、とリュックの中から三つ折りになった用紙を取り出す。昨日父から手渡されたものだ。

そして、アッと気付く。確かに『第十二回 経営セミナー』と書いてあるが……昨日は上条勝利の名に驚き、見落としていた。その名の横に括弧書きがあることに。

『富豪への道』セミナー? 何これ!
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