君の思いに届くまで
15章
15章


結局、「峰岸先生を囲む会」を勝手に発足させた女学生達に混じってキャンプに同行している。

琉、女学生5名、そして私。

明らかに私の存在は違和感があるわけで。

郊外のキャンプ場で昼から夜までバーベキューをして、そのままテントで一泊する予定だった。

琉はイメージ的にはアウトドアではなかったけれど、意外にもテキパキとテントを建てたり墨で火をおこしたり頼りになる存在で、女学生達は頬を染めながら嬉しそうにそんな琉を囲んでいた。

私はなるべくその中には入らないようにしながら遠目で楽しそうにしている学生達を眺める。

「飲まないんですか?」

一人木陰で休んでいたら、女学生の一人、水島彩が紙皿にとうもろこしと焼肉を乗せてやってきた。

琉の研究室にやってくる女学生の筆頭的存在で、今回のキャンプを提案したのもこの彩だった。

いつも私に対して冷ややかで、見下したような態度を取る彩は正直苦手。

「はい、食べて下さい」

彩はそう言って自分のポケットから冷えた缶ビールと紙皿を私に手渡した。

「あ、ありがとう」

少しだけ笑って受け取る。

折りたたみ式のベンチに座っている私の横に彩も腰掛けた。

「水島さんはもう食べたの?」

缶ビールを開けながら隣に座った彩に話し掛ける。

「はい、もうお腹いっぱいで。ヨウさんも遠慮しないであっちに来ればいいのに」

「私はいいの。お邪魔虫だし」

そう言いながらビールを口に含んだ。

お邪魔虫と言った私に彩は少しだけ笑う。

そこは否定しないんだ。

まぁ分かってる話だからいいんだけどね。

その時、女学生達と談笑している琉と目が合った。

琉は私に軽く微笑んでまた女学生達に視線を戻す。

今日何度目だろう。こうして微笑み合うの。

遠目でこうやって微笑み合うと、とても幸せな気持ちになる。

ちゃんと私の存在を意識してくれてるんだって感じられる。

一緒に暮らしだして2週間が経っていた。

相変わらず、キス止まりだったけど私には十分だった。

それが琉なりの優しさだとわかっていたから。
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